編集長は鰻の調理人?|翔泳社の本
  1. ホーム >
  2. コラム >
  3. 編集長は鰻の調理人?

編集長は鰻の調理人? 2012.07.04

 はじめまして。新入社員の門松です。今日はまだまだ編集のへの字もわからないわたしから見た、「編集部」の様子をお届けします。よろしくお願いします。

 みなさん、「編集部」と聞いたら何を思い浮かべますか。赤ペン、眼鏡、無精ひげ、本好きの集まり、寝袋、紙だらけの机、鳴り響く電話、締切……わたしの入社前の編集部のイメージです。少し不健康そうな、けれどもある意味ワイルドなイメージです。

 こんなイメージでしたので、はじめて編集部のエリアに足を踏み入れた時、驚きました。「しーん」。「しーん」って表現生んだ人と握手して分かち合えそうなほどの、「しーん」。この部屋誰もいないんじゃないか、座っている人みんなマネキンなんじゃないかって思ってしまうくらいの、「しーん」。

 部屋の隅々まで、蛍光灯の裏まで浸透した、「しーん」。椅子やコピー機にまで「しーん」と言われている錯覚を覚えるくらいの、「しーん」。なかなか存在感のある、「しーん」でした。そしてこの「しーん」への感動がおさまってくるとものすごい勢いで四方八方から聞こえてくる、

「カタカタカタカタカタカタカタカタ…」
「カタカタカタカタカタカタカタカタ…」
「カタカタカタカタカタカタカタカタ…」

 先輩方のタイピングが、とても速いのです。著者さん、デザイナーさん、DTPさん、たくさんの方とのやりとりの音、本に書いてある内容が合っているかチェックしている音、原稿の直しをまとめている音、とにかく、編集者ががんばっている音なのだと後で知るのですが、

「原稿まだかーーーーっっ!!!!(叫)」
「まだっすっっ!先生と連絡とれません!!(叫)」
「電話しろ~~~っっつかまえろ~~~っっっ!!!(絶叫)」(うしろで電話は鳴りやまない)

 みたいな世界だと思っていたわたしには、この光景はかなりの対極で、強烈な第一印象となりました。


最初の衝撃! 静寂の編集部

 出端で大きく編集部のイメージをくつがえされたわたしですが、イメージ通りで思わずニンマリするところもありました。先ほどの「しーんカタカタ」の部屋の壁には出版社らしく、本がぐるりと囲みます。

 そしてこの本たちに見守られる形で、編集者の机が並びます。この編集者の机の上が、本当に本や書類で埋まっているのです。ドラマや漫画でよく見るあの机の上です。どこにでもあるようなオフィス机の上に、コンビニの本棚を作れそうな量の本が並びます。

 そして「言う」を「いう」に統一したり、追加になった文を書き加えたりして、真っ赤っかになった原稿があちらこちらにあります。ドラマや漫画でよく見るあの原稿です。

 親指の第1関節くらいにもなる原稿の束を一枚一枚、何度も何度も、赤ペンでチェックをいれていく先輩方。その光景を見た後に本を手に取ると、1ページ1ページじっくり読みたくなるのです。


編集者のお城

 そしてこの原稿と一緒に机の上に置かれている企画書。本になる1番はじめの状態です。タイトル、概要、読者層……などが書いてあります。この企画をたてることが、編集者のメインの仕事です。

 編集部配属初日、ミーティングで編集長から最初に頂戴したお言葉は「今だったら、鰻の1番おいしい食べ方は~、蒲焼きなのかな」でした。

 なんのことかときょとんとしていると、「鰻の食べ方は蒲焼きだけじゃなくて白焼、鰻飯、フライっていろいろあるでしょ。脂がのってる時期は蒲焼きの方がうまいとかさ、この時期だったらさっぱりさせてもおいしそうだな、って調理法を考えるでしょ。本も一緒だよ」と編集長。うんうんと先輩方。

 同じテーマを扱った本でも、どういう人にどういう風に使ってもらいたいのかで本のつくり(構成)がちがう、この本のつくりかたを調理法に例えていたのでした。なるほどとわたし。

 まずはたくさんの本を読んで、どういう調理法があるのかを学び、いつかとびっきりおいしい1品(1冊)を、お出ししたいと思います!


第2の衝撃!編集長は鰻の調理人?

※先輩注:このコラムは4月に入社した新入社員カドマツの目から見た編集部の紹介でした。今後はカドマツの成長談をお届けしたいと思います(不定期連載予定)。さて彼女はどんな鰻を食べさせてくれるのでしょうか? 当面は皿洗いですけれど……。なおイラストはすべて本人作です。