担当者だけでなく管理職でもマイナンバー制度の理解が必要。そのとき役立つマイナンバー実務検定とは?|翔泳社の本

担当者だけでなく管理職でもマイナンバー制度の理解が必要。そのとき役立つマイナンバー実務検定とは?

2016/05/30 08:00

 マイナンバー制度、皆さんの会社では理解が進んでいますか? 翔泳社では5月23日に『法務教科書 マイナンバー実務検定2級合格ガイド』を刊行しました。本検定は2015年8月から始まり、すでに3万人以上の方が受験しています。今回、検定を主催されている全日本情報学習振興協会の副理事長・牧野常夫さんと、本書の著者・古川飛祐さんにお話をうかがいました。

 マイナンバー制度の理解度を測る「マイナンバー実務検定」が2015年8月から始まりました。すでに受験された方もいらっしゃるかもしれませんが、これから受験する方、受験を考えている方にとって、本検定がどういうもので、合格することでどんなメリットがあるのか、どのように勉強すればいいのかは詳しく知っておきたいところです。

 翔泳社では5月23日(月)に、皆さんの合格をサポートするために『法務教科書 マイナンバー実務検定2級合格ガイド』を刊行しました。本書は最も受験者数が多く、企業の担当者に必要な知識が網羅されたマイナンバー実務検定2級を徹底解説。重要事項が一目で把握でき、ダウンロードコンテンツの予想問題を解くことで合格にぐっと近づくことができます。

 今回、マイナンバー実務検定を主催されている全日本情報学習振興協会の副理事長である牧野常夫さんと、本書の著者である古川飛祐さんにインタビューをお願いしました。検定の注目度や勉強方法など、合格を目指す方はぜひ参考にしてください。

マイナンバー実務検定に大きな注目が集まっている

――まず、全日本情報学習振興協会の副理事長である牧野常夫さんに、本検定の概況や受験者の特徴などについてうかがいます。

 昨年から始まったマイナンバー実務検定ですが、受験者数や注目度はいかがでしょうか。

牧野:2015年8月に第1回の試験を実施しましたが、その際の受験者数は4500人ほどでした。初回だったため、そこまで多いとは考えていなかったので、たいへん驚きました。ところが、11月の第2回、12月の第3回ではその倍以上となる約1万人に受験していただくことができました。我々としては企業のマイナンバー管理の担当者が受験するものだと考えていたので、それ以上に広がって受験していただけたのはまったく予想外でした。

 第2回と第3回で受験者数が急増したのは、2016年から企業でマイナンバーの取り扱いが実際に必要になるからだったのではないでしょうか。マイナンバーの通知カードが発送され始めたのが2015年10月中旬で、11月末には皆さんの手元に届いていたと思います。各企業では2016年の医療控除申告書にマイナンバーを使用するため、従業員に提出を求めました。皆さんの会社でも、12月から2月あたりが提出期限だったはずです。企業としては、2016年に入る前に信頼できる知識を持っている担当者を確保しておきたかったのでしょう。

 マイナンバーの利用が本格化するのは2018年からです。病院の診察券、パスポート、戸籍などと連携されていきます。いまはマイナンバー制度について、そもそも知らない方や企業が多いので、検定を受験することで最低限の知識をつけておこうという動きがメインです。受験者数は第3回をピークに少し減っていますが、今後は着実に増えていくだろうと感じています。

牧野常夫さん
牧野常夫さん:一般財団法人 全日本情報学習振興協会 副理事長

担当者だけでなく、管理職でもマイナンバー制度の理解が必要

――検定にはどういう方が受験されているのでしょうか。

牧野:やはり総務、人事、経理の方が多いです。また、独立行政法人でもマイナンバーが積極的に使用される見込みですので、受験者が多いようですね。ですが、受験者の半数以上を占めるのは管理職の方です。

 たとえ社内の担当者でなくとも、管理職の方は部下からマイナンバーについて質問される機会があるでしょう。そのとき、なんとなくの知識で答えてはいけません。例えば、個人番号カードは身分証として利用できるため、必要な場合は事業者がコピーして保管できますが、マイナンバーが記載されている裏面は規定された事業者以外はコピーできません。にもかかわらず、上司がそれを知らなかったために裏面もコピーしてしまった、となれば一大事です。こうしたミスを防ぐためにも、管理職の方は2級程度の知識を持っておいてほしいですね。

 また、企業の担当者や管理職以外の方も検定を受験されています。やはり、自分の個人情報やマイナンバーがどのように使われているのか、知っておきたいという気持ちがあるのかもしれません。大学生も就活で検定を持っていることをアピールできますから、興味を持つ大学生は増えています。

検定3級でも基本的な事柄を知り、誤解を解消できる

――試験にはどのような問題が出題されるのでしょうか。

牧野:検定の名称のとおり、実務に直結する問題が出ます。3級はかなり基本的な事柄が出題されますが、巷で言われるような誤解はほとんど解消すると思います。特に分散管理については誤解が多く、テレビでも間違った情報が報道されていました。

 分散管理は、3級の試験では最初のほうで出題しています。マイナンバーは税務署、ハローワーク、年金事務所などが管理しているのですが、すべての個人情報がどこかで一括して管理されているということはありません。マイナンバーを軸に、個人のそれぞれの情報がネットワークで繋がっているだけなんです。たとえ行政機関でも、マイナンバーは限定された目的でしか利用できないんですね。

 ですから、例えば漏洩したマイナンバーで個人のあらゆる情報が一括して分かってしまうことはありえません。税務署はある人の収入について把握できますが、その人がどの病院に通っているかといった情報は知りえないわけです。こうした基本的なことは実務に関わらない方でも知っておきたいことですので、3級を受験しておいて損はありません。

 1級と2級では、マイナンバーの取り扱いの基準や安全管理のことが理解できるようになります。実務に関わる方が注意しなければならない点、行政機関や金融機関での取り扱いについても学べますね。

試験勉強することで理解が深まることが最大のメリット

――マイナンバー実務検定に合格することで、どのようなメリットがありますか?

牧野:マイナンバー制度は国民全員に関係しますし、企業活動にも不可欠になっています。ですから、まずはマイナンバー制度を理解しなければなりません。ですが、書籍を読むだけではなかなか頭に入りませんので、より理解を深めるために試験を活用できると思います。試験問題はマイナンバー制度の重要な部分から出題されます。ですから、本検定の問題を解くことで、マイナンバー制度の重要なところ、分かりにくいところを理解することができるわけです。それが大きなメリットですね。

 そしてその知識で検定に合格すれば、理解度が高い、知識が豊富だということの証明になります。企業はマイナンバーを扱う担当者をできるだけ少数にしようとしています。権限を集約することで情報漏洩などの危険から守るわけですが、そのために担当者には信頼が必要です。そのとき、マイナンバー実務検定は客観的な信頼の指標になるでしょう。

社労士でも事務仕事の人でも、勉強方法はほとんど同じ

――ここからは、本書の著者で、社会保険労務士(社労士)として「うかるぞ社労士受験講座」の講師も務めている古川飛祐さんに、マイナンバー実務検定2級に合格するための勉強方法、そして本書の使い方についてうかがいます。

 そもそもの話になりますが、古川さんは社労士です。マイナンバー実務検定とはどのような関係があるのでしょうか。

古川:「うかるぞ社労士受験講座」の講師は受験していますし、社労士に合格した受講者の方も、次にマイナンバー実務検定を取るために続けて勉強していますね。社労士に相談にいらっしゃる事業主の皆さんは、社員の個人番号をどう扱っていいのか分からないとおっしゃいます。ですから、マイナンバー実務検定を持っていれば、「我々に任せていただければ大丈夫です」と言うことができます。それが社労士にとっては次の仕事に繋がっていくことになります。

古川飛祐さん
古川飛祐さん:古川労務管理事務所、うかるぞ社労士受験講座 講師

――社労士の方と企業で事務をしている方で、本検定の勉強方法は異なりますか?

古川:それほど変わらないと思います。一般の事務をされている方は、マイナンバー実務検定に合格するために社会保障や税番号の理解が必要だと言われると、専門的な勉強をしなければならないのではと心配されることがありますが、そんなことはありません。逆に、社労士の方に向けては、これからは2級程度のことを最低限覚えておかないと仕事ができないほど大事なものだと言わなければなりません。書類に個人番号を書かないといけませんからね。

勉強し始めたばかりの人が気をつけるべきこと

――普段事務の仕事をされている方が勉強し始めるときのポイントは何でしょうか。

古川初めて見る用語がたくさん出てくると思いますが、そこであまり悩まないことが大事です。例えば、「個人番号利用事務等実施者」という用語があり、これは事業主やハローワーク、税務署も指します。このうち事業主は個人番号関係事務実施者で、ハローワークと税務署は個人番号利用事務実施者です。これらをまとめて個人番号利用事務等実施者といいます。

 あと、「個人情報」という言葉は日常的にも使いますが、マイナンバー制度には「特定個人情報」という用語があります。これは個人番号を含んだ個人情報のことを意味しています。勉強し始めたばかりの方はこれらの区別が難しいかもしれませんが、問題を解きながら慣れていけばいいので、最初から暗記しようと頑張りすぎる必要はありません

 また、日常生活や業務にあまり関係しない事柄も多いと思うので、取っつきにくく感じるかもしれません。ですが、そういうところは置いておき、個人番号カードのような自分にも関係することから覚えていけばいいと思います。

――本書ではその2点をクリアしてもらうために、どのような工夫をされていますか?

古川:用語については、初出の際に説明するだけでなく、後ろのページで登場したときも欄外で説明したり、どういう意味だったか尋ねたりするワンポイントチェックを入れています。個人番号利用事務等実施者と特定個人情報は最初から最後までずっと出てきますので、基本的な用語とはいえ繰り返し目に留まるようにしています。

 また、自分に馴染みがない箇所については、覚えきれなかったら覚えなくてもいいと思っています。本書でも各項目に重要度をつけていますが、試験に出題される部分はおおよそ決まっていますので、重要度が高いものを優先的に覚えてください。個人情報保護委員会のことは、1問か2問しか出ないので、いっそ覚えなくても構いません。一方で、個人番号カードに関する問題は多いので、ここで点を稼げば合格点を取ることができます。馴染みがなく問題数も少ないところは覚えない、と割りきって勉強することも大事でしょう。満点を取る必要はないんです。

――ただそうすると、試験のために覚えなくていいと判断した部分が、実際の業務で活用できなくなるのではないでしょうか。

古川:普通に仕事をする分には困らないと思います。例えば個人情報保護委員会の知識が必要になるのは、「あの企業は個人番号を守っていないから注意しよう」というときです。ちなみにその注意には助言、指導、勧告があり、勧告に従わないと命令、命令違反すると罰金や懲役刑と、どんどん厳しくなっていきます。ですが、どの企業も安全管理措置の体制を整えているのが普通ですので、検定を受けにくるような、毎日真面目に事務の仕事をしている方にとってはそこまで必要になる知識ではありません。

――また、本書の最後に社会保障に関する章を設けています。その意図は何なのでしょうか。

古川:本書はマイナンバー実務検定2級に合格するためのガイドですが、では実際にマイナンバーはどこで使われているのかというと、いまいちイメージできない方がいるのではと思います。会社に入ったらさまざまな書類に個人番号を書かなければいけませんし、退職して医療保険を国民健康保険に切り替えるときにも役所に個人番号を提出します。親御さんなど介護を受けたいときに介護保険を申請するときにも個人番号を使います。このように、マイナンバーをより身近に感じてもらえたら勉強が楽しくなるのでは、と考えて、本書に社会保障の章を設けました。

本書で試験問題の解き方も一緒に覚える

――全然知識がない状態で勉強を始めるとき、本書はどのように使うのがいいのでしょうか。

古川:本書を手に取ってくださる方は、おそらく会社から指示されて検定を取得するために勉強しようとしていると思います。最初から通して読むと分かりやすいように書いていますが、難しいと思ったところはあと回しにして、理解できるところから読んでいくのがいいと思います。検定ではマイナンバー制度のうち、一部が出題されます。さらに、その8割を正解すればいいと考えてみましょう。

――問題の解き方が分かっていれば、少しは楽になりそうですね。

古川:そうなんです。テクニックはぜひ覚えていただきたいですね。例えば、試験の中には問題として挙げられている文章が正しいか否かを当てるものがあります。個人番号が危険な状態になりそうな、保護されなさそうな文章は誤りで、きちんと守ってくれそうな文章は正しいです。「~しない」「~という義務はない」という文章も間違いである可能性が高いです。ですから、丸暗記しなくてもテクニックで解ける問題も用意されているわけです。

 本書ではかなり多めに図表を掲載しているので、それを絵として覚えてしまうのもいいかもしれません。検定にすぐに受かる人は、自分がカメラになったつもりで、写真を撮るような感覚で図表やページ自体を覚えてしまうそうです。

――検定は3か月ごとに実施されていきますが、本書はどれくらいのペースで勉強すればいいですか?

古川1か月で勉強し終わるのを想定しています。というのは、検定の申し込み締め切りが試験当日の1か月前なんです。締め切りぎりぎりになってとりあえず申し込み、そのあと参考書を買う方でも、本書であれば試験日に間に合うということです。

2級を取得したあとは、ぜひ1級に挑戦してほしい

――マイナンバー実務検定2級を取得したあとはどうしていけばいいのでしょうか。継続的に勉強する、あるいは1級を目指すなど、いくつか選択肢があると思います。

古川:せっかく2級を取得したのであれば、1級取得のために勉強するのがいいと思います。2級の知識があればそれほど苦ではないでしょう。会社の指示で受験した方でも、合格して安心……それっきりではもったいないですから、ガイドラインや法律の逐条解説を日常的に読む習慣をつけてみてください。そのあと1級に挑戦しても遅くありません。

 1級の受験者は2級の半分ほどですから、その分価値が上がります。勉強する範囲は広くなりますが、普段の仕事でも個人情報を取り扱う責任者になりたいと考えている方にとって1級は必須だと言えますね。

 また、マイナンバー制度はすでに施行されているので、最低限の知識は一般常識の範疇になりました。公務員試験や社労士試験でもマイナンバーに関する問題が出題されるでしょう。

 マイナンバー制度について法律を読んで覚えるのは難しいので、マイナンバー実務検定2級を取得するつもりで勉強するのがいいのではと思います。そのときにぜひ本書を役立ててください。

マイナンバー実務検定2級試験 徹底攻略セミナーを実施!

 翔泳社では7月25日(月)の18:30から、本書をご購入いただいた方を対象に、翔泳社社内セミナールームにて「マイナンバー実務検定2級試験 徹底攻略セミナー」を実施します。講師は古川飛祐さん、教科書は『法務教科書 マイナンバー実務検定 2級合格ガイド』(本書)です。9月11日(日)に実施される第7回の試験に備えて、ぜひご参加ください。

 セミナーへの参加をご希望の方は、次の2つのボタンいずれかをクリックしてご応募ください。

▶ セミナーの会場で本書を購入希望の方:「参加・書籍付き」
▶ 本書を購入済みの方・セミナー前に購入予定の方:「参加・書籍なし」

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法務教科書 マイナンバー実務検定 2級合格ガイド

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法務教科書 マイナンバー実務検定2級合格ガイド
著者:古川飛祐
発売日:2016年5月23日(月)
価格:2,484円(税込)

目次

  • 第1章 マイナンバー実務検定攻略のツボ
  • 第2章 総則を得点源にしよう
  • 第3章 個人番号の取扱い
  • 第4章 特定個人情報の保護
  • 第5章 情報漏えいを防ぐための体制
  • 第6章 押さえておきたい労働保険・社会保険の知識