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介護福祉士インタビュー

鈴木裕太さん 介護福祉士(26歳)

日本で最初の認知症専門病院である「きのこエスポアール病院」を運営する社会福祉法人、新生寿会による施設(ジロール神田佐久間町)で働く介護福祉士。福祉系専門学校介護福祉科を卒業後、オープン直前だった現在の施設を受け、採用されて今に至る。勤務6年目。

介護をはじめようと思ったきっかけは?

両親は二人とも働いていて、子供のころからおばあちゃんの家にいることが多く、お年寄りに接するのは普通のことでした。介護の専門学校があることを知って、行ってみようと思ったのがきっかけです。 ですが、専門学校の実習の時に味わった介護が苦痛で苦痛で・・・。お年寄りを人として見るのではなく、物のように、それこそ邪魔者のように扱うことが多い様子を見て、非常に苦痛でした。スタッフのリズムで時間が進んでいき、お年寄りに合わせることはなくて、人の役に立ちたいと思っていたのに、自分がお年寄りを物のように扱ったり、何か言葉をかけられてもその言葉を無視しないといけない状況だったりして、本当にいやになりました。

え?お年寄りの言葉を無視?

お年寄りによばれて、話しを聞いていると話しをしていないで、実習としてあなたはやるべきことがあるでしょう、今はおむつ交換の時間なんだからそれをしなさい、っということなんです。お年寄りが何か言っていても、また同じことを言っているんだからそんなこと聞かないで業務をこなしなさい、という施設でした。3か所、実習に行ったのですが、すべてそういう感じでした。

  お年寄りが動いてしまうからと、車いすにしばりつけるところもありましたし。自分で服が脱げないように全身つなぎの服を着せたりして、お年寄りを抑制する考え方の施設もありました。今はそんなことはないと思いますが。

今の施設とはどのように出会いましたか?

そんな中で、すべてがそういった施設ではない、っと学校からも言われてはいたのですが、そういった施設とは出会えていませんでした。就職の時に、初めて今の施設に出会ったのです。今の施設は、介護の場はお年寄りがいつも通りの穏やかな生活を送ることができる場でなければならない、というスウェーデンの介護の考え方をとりいれていたり、ユニットケアを始めた施設でもあるんです。人を人として尊重できる現場で働きたいと思っていましたし、そういったものを広めていきたいとも思っていました。でもそれも、学校での実習の経験があったからわかったことともいえます。

  入浴、排泄、食事の三大介護に追われる日々はいやだ、単に業務として流れ作業的にそれに関わる日々はいやだ、人として人と触れ合う仕事がしたい、と思っていましたから、やっと出会えた気がしました。

就職前と就職後では変わりましたか?

もっとお年寄りのことを考えるようになりました。

  今、学校で教えてくれる知識とは違う知識も必要なんだなっと、実感しています。学校で教えてくれるのは介護の基本的な技法です。介護の方法。それは勿論大事なんですが、今必要だと思っているのは心。心と心を触れ合わせることが大事なんだな、っと。

  この施設でも、バリデーションをとり入れていて、お年寄り一人ひとりにどう向き合うかというコミュニケーションをとても大事にする施設なんですよ。

編集部注:バリデーション 認知症の方とスタッフが対等、平等であること。ケアする側、される側の垣根を取り払い、愛する家族や友人となって感情を共有するコミュニケーション法。

 普通は職員として入る、というのが当たり前なんでしょうけど、自分も一緒にここで生活をしています(自宅は別にあり。そういう気持ちでいるという意)。仕事だから、っと割り切るようなことは全くありません。

  今自分がここで生活して居心地が悪いんだったらお年寄りも居心地が悪いんだろうな、っと思います。どうすれば過ごしいいんだろうっと考えるようになりました。

 ここの施設は認知症の人しか入れなくて、他の施設からうつってこられた方もいらっしゃるんですが、すごく不安だと思うんです。おそらく認知症のお年寄りは、たとえば自分が全く知らない外国で一人置いて行かれたような感覚だと思うんです。それも毎日。ですから、ダメージをできるだけ少なくしてあげたいと思って。

具体的には?

お年寄りの一人ひとりの表情と目をみます。人によって当然コミュニケーションのとり方が違います。同じ人でもその時その時で思っていることは違いますし、こうすべきという答えはないと思うんです。認知症のお年寄りに僕らがどこまで近づけるか、どう合わせるか、というのがとても重要です。

日々どのようなことを?

ここ(施設)は家なので、食事を一緒に作って一緒に食べることもします。プログラムもありません。家にいてプログラムがあるというのはおかしいですもんね。お年寄りのしたいことを適宜生活の中でしています。近くの銭湯に一緒に行ったり、コーヒーを飲みに外出したければ一緒にします。お風呂に入りたい場合はお風呂に入りますし。お年寄り一人ひとりに合わせて日々一緒に生活をしています。

  事務の仕事もありますが、僕は事務仕事が嫌い(笑)なので、現場でお年寄りと一緒にいたいんですよね。

心がけていることはありますか?

 お年寄りが何を今考えているのか、常に考えます。不安な表情をしているときには何が不安なのかをすぐに考えますし、ちょっとおかしいな、昨日と違うな、っということにはすぐに気付きたいと思っています。ほんのちょっとした違いでも気付くことが大事。体調の変化にも早めに気付けるかどうかでその後、違ってきますし、気づきは非常に大事にしています。それがお年寄りや家族の安心感にもつながっていきます。

最後まで看取りをするうえでも大切だと思います。

介護福祉士の仕事をしていてよかったことは?

 日々、今、楽しんでいるので、改めてよかったな、っと考えたことはなかったんですが・・・。お年寄りにありがとう、っと言われることは嬉しいですね。家族に、助けてもらえてよかった、っと言ってもらえたこととか。そういう一言一言が嬉しいですね。

 仕事として割り切って考えたことはないのですがいろんな人に出会えたことも嬉しいことです。お年寄りの家族もそうですし、地域の方との関わりが生まれたことも嬉しいこと。人との出会いが多いことがよかったこと、といえます。

今後は?

 他でできないこともやっていきたいですね。今この形だからこれでないといけないというのではなくお年寄りが望む方法、形を常に求めて行きたいな、っと思っています。具体的には、新しい在宅介護の在り方を模索していきたいな、っと思っています。

 今、施設が足りていないと言われている現状で、家で出来る限り生活を続ける、というふうになっていますが、在宅で行うサービスをどうやっていくか、というのもそのひとつかと。家族の誰かが仕事を辞めてまで介護をしなければいけない現状があったりもするので、何かできること、形、があるんじゃないか、と。

  小規模多機能型居宅介護をやりながら、より長く家で生活するにあたって必要なサービスというのをみつけてどんどんやっていきたいと思っています。

今までどこもやっていないことでも、チャレンジしていきたいと思っています。