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社会福祉士インタビュー

大井川裕代さん

看護師として訪問看護に携わるうち、社会福祉に興味をもち学習を始める。40歳を過ぎてから社会福祉士の資格を取得し、2年後には独立。現在は、主に福祉相談とケアコンサルテーション、成年後見の仕事をしながら、学校講師や研究など、精力的な活動を行っている。おおいがわ社会福祉士事務所長。
福祉教科書シリーズ:社会福祉士書籍の執筆編者。

社会福祉に興味をもった理由は?

─利用者にとっての必要な資源がない!?

「もともと私は看護師でした。訪問看護をしていた時に利用者にとって必要なサービス……つまり社会資源がないことに気づき、常に医師の指示がないと動けないことへのジレンマを歯がゆく思っていたところに、あるソーシャルワーカーとの出会いがありました。社会資源を調整し、利用してつなげて、人の生活を援助していく仕事だと聞いて興味を持ちました。」

資格を取ろうと思ったきっかけは?

─独立に資格が必要だった

「もともとハタチの頃から、40歳を過ぎたら独立してフリーになりたいという気持ちがありました。看護師として医療現場で働いていましたが、訪問看護では独立は無理とも思っていました。看護師以外の資格をミックスしないと独立しても仕事にはならないと。そこで、社会福祉に興味を持って社会学を勉強し始めたときに、資格を取ろうと思いました。」

「資格取得後、2年後には独立したわけですが、その前からも少し相談を受けたりしていました。相談を受けながら、また勉強してと。看護師の時代、勉強していた時期、やってきたことはすべてつながっていますね。」

合格までどれくらいかかった?

─最初に受験は2回までと決めていた

「2回目で合格したので、およそ2年間です。40歳過ぎで勉強を始めたこともあり、勉強ばかりやってもいられません。2回で受からなければ、しがみつかずにあきらめようと思っていました。期限を決めたおかげで集中できました。」

独立系の社会福祉士の活動とは?

─詐欺師以外はなんでもやる、というくらい様々なことをする仕事

「自身の専門的裁量のもとで、利用者のニーズに合わせて生活支援をしたり、サービスの調整をしながら相談援助を行ったりする仕事です。専門的裁量に基づく判断というところが大事です。」

「専門的裁量というのは、生活支援ジェネラリストとしての専門家、という意味です。ソーシャルワーカーは、社会支援が必要な人にとっての「なんでも屋」にならなければなりません。その人の生活すべてを把握して始めて援助ができます。そのうえで、彼らのニーズを実現するための知識や、社会関係をきちんと作れる専門性がないといけません。こうした専門家ということです。」

「これまで、ソーシャルワーカーが日本で活躍する場所はせまかったのですが、今は学校、刑務所など範囲が広がっています。まず、社会福祉士の資格をとって、そこからひとつひとつスキルをみがけばいい仕事ができると思います。」

大井川さんは具体的にどんなお仕事をされていますか?

「大きく3つあります。1つは、成年後見の仕事です。2つ目は教育の仕事。これは学校で専門科目を教えています。3つ目は自分の好きなことをやると決めていて、「組織と個人」というテーマに関心があるので研究しています。ほかには、行政からの様々な依頼を受けたり、公的な委員会からの依頼で調査したりなどしています。」

「成年後見は判断能力が十分にない人を保護する制度ですが、そうした人の財産管理や身上監護などが主な仕事です。たとえば、専門職団体や家庭裁判所から仕事の情報がきますので、自分で手をあげて仕事をうけます。仕事をうけると、その方の生活擁護を開始します。中には、家族がおらず施設で生活していて、寝たきりで会話もできないケースもあります。1か月に最低1回は訪問して、生活の状態を確認し、医師やケアマネジャーと話をします。とにかく書類仕事が多くて訪問も毎月あるので、1か月に10人くらいが限度と考えています。」

「成年後見の仕事は、若い人でも、一定の知識と実務経験5年くらいあれば、年齢に関係なくできると思いますよ。ただ、事務処理能力、対人対応能力、調整能力が必要です。」

どんなことがやりがいですか?

─職業倫理や経験が大事

「専門的な裁量をもって判断して物事を進めていくことです。誰からも指示はされません。そのうえで、人の生活を保護していかなければなりません。逆にいえば、まともな神経、判断、常識が求められます。それがなくなってきたら、この仕事は続けてはいけない。」

「現在、一人暮らしの高齢の方が多い。15年後には3,000万人になると言われています。人は誰でも最終的にひとりになります。そのときに、支えてくれる人としてどういう人が必要か、ということを考えます。自分では生活擁護しているつもりでも、侵害していることもあります。だから、ただ一生懸命にやればいいということは通用しません。時には法律的に分けて考えることも必要です。そこには専門的な知識、経験や職業倫理が大事になってきます。」

資格を取りたい・取った人にひとこと・・

─良きメンター(※)をみつけよう

「私が仕事につまずいたときに、先輩から言われたことがあります。それは“仕事として相談援助をした人、100人の記録をとりなさい”ということです。これは、まず100人の相談援助をしっかりやりなさい、ということだと思います。記録を100ケースもつことで、はじめて社会福祉士の入り口に立てると思います。100人というと大変そうですが、2年くらいでできると思います。」

「援助は技術です。技術を確実に積み上げることで、仕事に面白みが出てきます。そこを目指すためには、資格をとって、しばらくしてから相談援助を始めるのではなくて、すぐに始めることをお勧めします。」

「この“100人の相談援助の記録”という言葉は今も私の中にしっかり残っています。このように、皆さんも良きメンターをみつけるといいと思います。そして次に自分が良きメンターになれるようにしましょう。」

※(編集部注)メンター:良き相談相手、助言者のこと。仕事では、尊敬できる先輩や上司などを指し、単に業務指導だけでなく、広くアドバイスをしてくれる人。