ITエンジニアに読んでほしい!技術書・ビジネス書 大賞 2020

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特別ゲスト

プレゼン大会に審査員として参加いただく特別ゲストの紹介です。おすすめ本を3冊、ご紹介いただいています。

永瀬美穂(ながせみほ)さん

アジャイルコーチ。株式会社アトラクタFounder兼CBO。一般社団法人スクラムギャザリング東京実行委員会理事。認定スクラムプロフェッショナル。産業技術大学院大学特任准教授、東京工業大学および筑波大学非常勤講師。著書に『SCRUM BOOT CAMP THE BOOK』訳書に『レガシーコードからの脱却』『アジャイルコーチング』『ジョイ・インク 役職も部署もない全員主役のマネジメント』。

永瀬さんおすすめの3冊

アジャイルイントロダクション

大御所バートランドメイヤー氏によるアジャイルへの批評。仕事柄アジャイルに懐疑的な人に出会うことがあるが、ここまで冷静な批判は聞かないので読み応えがあり、耳も痛い。ソフトウェア工学的見地から、再現不能な事例や理想論、ご都合主義に文句をつけているが、そこが研究され文書化されればアジャイルももっと発展するのだろうと思う。好き嫌いが分かれそうな本。

ソフトウェア・ファースト あらゆるビジネスを一変させる最強戦略

GoogleやMicrosoftといった世界的大企業でエンジニアとして働いてきた及川氏が、なぜ今ソフトウェアが中心にあるのか、そのためにどんな勘所が必要なのかという、わかっている人はわかっている当たり前の話をものすごくわかりやすく書いている本。特に現場感のない経営者や管理職は必読。分厚い経験に裏打ちされた説得力のあるキャリアの話は若手エンジニアにも響くと思う。

レガシーコードからの脱却 ―ソフトウェアの寿命を延ばし価値を高める9つのプラクティス

アジャイルの技術プラクティスや規律や態度が中心のゴリゴリした本。過去に名著とされたアジャイル関連の技術書にあるようなことが書かれているので目新しくはないが、ソフトウェアエンジニアの心得を詰め込んだ1冊はここ数年意外となかったかも。シニアはもちろん、若手エンジニアや志を持った学生にも勧めたい。イケてないソフトウェア開発の匂いも汚れもこれ1冊。名著の翻訳に携われてよかった(はいすみません、拙訳です)。

広木大地(ひろきだいち)さん

1983年生まれ。筑波大学大学院を卒業後、2008年に新卒第1期として株式会社ミクシィに入社。同社のアーキテクトとして、技術戦略から組織構築などに携わる。同社メディア開発部長、開発部部長、サービス本部長執行役員を務めた後、2015年退社。現在は、株式会社レクターを創業し、技術と経営をつなぐ技術組織のアドバイザリーとして、多数の会社の経営支援を行っている。著書『エンジニアリング組織論への招待~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタング』が第6回ブクログ大賞・ビジネス書部門大賞、翔泳社ITエンジニアに読んでほしい技術書大賞2019・技術書大賞受賞。一般社団法人日本CTO協会理事。

広木さんおすすめの3冊

圏論の道案内 ~矢印でえがく数学の世界~ (数学への招待シリーズ)

圏論はざっくりいうと「やじるし」を数学した理論です。これがプログラミングから認知科学、物理学といった広い範囲に応用がされていたりする。もしかしたら、圏論の本というと、あーこりゃ関数型言語の愛好家な人々によるのモナドハラスメントが始まるぞと思ってとっつきにくいと感じる方も多いかもしれない。この本は、数学の教科書にありがちな入門や概論、基礎、招待といった初学者向けのタイトルをつけといて結局1ページ読むのに2週間かかるような本じゃない。すらすらと圏論がどんなにパワフルに世界を説明していくのかを空中から眺められる。語り口が軽妙で、気がついたら読み終わってるという素晴らしい本でした。

LeanとDevOpsの科学[Accelerate] テクノロジーの戦略的活用が組織変革を加速する

この本、原著で一生懸命読んだと思ったら、素晴らしい翻訳本が出てとてもうれしい。すべてのソフトウェアビジネスに関わる人(CEO/CFO/CTO)が読んだ方がいい2冊目の本です。1冊目は、僕の口からは言えません。まざまざとソフトウェア工学が経営学に進化することを暗喩していくような、工学と経営の橋渡しとなる本で、エンジニアリングチームや企業の持つさまざまなケイパビリティ(実践されているプラクティスや習慣)がどれだけ、事業成長とも関連しているのかを科学的、疫学的に調査しようとしている本です。このような活動をもっと応援していきたいし、日本でもなしていきたいなという思いが僕個人にはあるので多くの人に知られてほしい。現実をACCELERATEしよう。

両利きの経営 「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く

ソフトウェアやデジタル技術の時代、どんなことを考えて経営ってやっていけばいいの。すでに稼げている巨大なビジネスをディスラプトされるからベンチャーな人々が簡単に新しいことをやれだの不確実性に向き合えだのいうけど、そんなこと簡単にできるわけないだろって思いませんか。そういう二律背反な表現が両者の対立を生み出してしまう。現実のイノベーションは、分断じゃなくて理解と融和から始まります。経営学の本流からDX時代の経営を支える新しいイノベーション理論の話が、日本語で読める。しかもとてつもなくわかりやすい。探索と深化の両利きという両輪をコントロールして、イノベーションのジレンマの壁を乗り越える鍵がここにあります。

山下智也(やましたともや)さん

英治出版株式会社プロデューサー。書籍『シンクロニシティ』をきっかけに英治出版に新卒入社。2008年からビジネス書や社会書を企画・編集。2018年から新規事業開発に従事し、ウェブメディア「英治出版オンライン」、会員制コミュニティスペース「EIJI PRESS Base」をプロデュース。アイデア・夢・願いをみんなのものにすることで実現に近づけるパブリッシャーを探求している。

山下さんおすすめの3冊

となりのヘルベチカ――マンガでわかる欧文フォントの世界

ビジネスで欠かせない、それでいて実はよく知らない「フォント」の奥深い世界を、気軽に楽しくマンガで学べる一冊。読めばきっと、擬人化された欧文フォントたちに魅了され、日常にあふれる書体やロゴを観る目が変わります。ちなみに私のお気に入りは、DINです! 。

測りすぎ――なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?

測ることが目的化してしまう、測れるものしか測ろうとしない、結果を自分の都合に合わせて評価してしまう……そもそも、数値化・見える化でどんな未来をつくりたいのか? データ時代を生きる私たちがつい見過ごしがちな視点が得られ、本来の目的を見つめるきっかけをもたらしてくれる本です。

はじめてのファシリテーション 実践者が語る手法と事例

会議、研修、ワークショップ、勉強会など、人が集まるあらゆる場の成否を分ける決定的機能「ファシリテーション」。その基本と応用を第一線の実践者・研究者が、豊富な事例とワクワクする手法とともに解説。参加者一人ひとりを大切にしたい、個性や才能が生きる場をつくりたいと願うすべての人におすすめします。