そっくり人形の舞台裏|翔泳社の本
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そっくり人形の舞台裏 2013.07.04

 翔泳社の長寿シリーズのひとつに『10日でおぼえる』シリーズがあります。かれこれ15年続いている学習書のシリーズです。

 あつかうテーマはプログラミングが中心ですが、のべ100タイトル近い数にもなります。今は、「ほんとうに10日で学べるのか」というツッコミをする人もいなくなるほど、プログラミング書の売り場でも定番書としての位置を不動のものとしています。

 3年前、シリーズをリニューアルした際、カバーに登場したのが、クレイ人形です。作っていただいているのは、TVチャンピオンという番組の『そっくり人形作家選手権』にも出たことのある池本浩司さんです。

 この人形、ご想像の通り、執筆者のそっくり人形がほとんどです。ほとんど、というのは、実は執筆者とは別の人物をベースに作った人形がいくつかあるからです。というのも、執筆者の方が、ご自分を人形にされることを拒むケースもあるのです。

 そんなときは、あたりさわりのない人を探してきます。モデルなしには、そっくり人形が作れないので。どの本が「別人そっくり」なのかは、あえて明らかにせずにおきたいと思います。


リニューアル後の『10日でおぼえる』を集めてみました

 本人か、別人か、という問題のほかに、似ている、似ていないという問題もあるかもしれませんが、いずれにしても、本書の中身にはまったく関係ございませんので、ご了承ください。

 本を開いて気づいた方もいらっしゃるかと思いますが、このクレイ人形、けっこういろいろなポーズをとっています。「クレイ人形って、焼き固めてあるはずでは?」と疑問に思われる方もいるかもしれません。

 そうなんです、本来、この人形は動かないはずなのです。だからといって、何体も作っているわけではありません。実は、この人形、首と腕に可動の仕組みを入れているんです。なので、首と腕を取り外し、また付け替えることも可能です(なので、二冊を執筆いただく場合は、体を作りなおして首を流用しています)。


首の付け替え、また肩を可動式に変更した際の指示用メモ

 しかし、これも二冊目からで、リニューアル一冊目の人形は、ポーズが固まっていました。撮影時に、困ったあげく、左右の腕を反対にし、練り消しゴムで貼り付けて撮影、レタッチで修正して自然に見せています。

 そのあとも、せっかく可動にしたのに、髪の毛が邪魔をして首が回らないというときは、カッターで肩を削ったこともあります。なので、撮影後の人形は外科手術のあとのようなのです。

 また、こうして撮った写真を表紙に使えるレベルにするには、もうひと苦労があります。デザイナーの宮嶋さんがすべてデータ上でやってくださるのですが、歯の塗りのあまいところをなおしたり、肌色のくすみをとったり、ほお紅を入れたり、なかなか手間がかかっています。ようするに、お化粧です。


左は撮影時、右はレタッチ後。
右手と削られた左肩が描き加えられています。さらに全体的に色も塗り直されています

 人形が本自体を持っているタイトルもあります(JavaやExcelVBAなど)が、これは白い紙を持たせて撮影したところに、本のカバーデザインの画像を貼り込んで作ります。気づいていない方も多いと思うのですが、気づかないところでも手を抜かずにやってくださる、宮嶋さんに感謝です。


左は撮影時、右はレタッチ後。
白い厚紙を持たせたところに、あとから書影をはめ込んでいます。さらに右腕ものばしています

 いつまで、このそっくり人形が続くかは定かではありませんが、このデザインが続くかぎり、執筆陣には人形になっていただきたいと思っております(人形NGの場合は、隣りにいそうな感じの方がモデルになりますが)。ちょっと不気味なところもないわけでありませんが、とても愛嬌のある人形です。

 もし今度、書店やウェブサイトで見かけた際は、これは本人かどうか、ここはレタッチどうか、あれこれとよく見てもらえれば、うれしいです。

せきね

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