ヒット作さがしはブックフェアにあり!?|翔泳社の本
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ヒット作さがしはブックフェアにあり!? 2012.09.04

 毎年なにかしら話題になる本ってありますよね。あれ売れたよね~と誰もが知っているヒット作から、映画の興行に乗って原作が注目された本、いきなりメディアで話題になり突然売れ始める本、じわじわとロングで売れている隠れた名作など。ハリーポッター・シリーズの大ヒットに、スティーブ・ジョブズの公式自伝などは比較的記憶に新しいところ。今回はこうした海外モノの「翻訳書」の版権取得にフォーカスします。

 翔泳社では、ハイエンド系プログラミング書とビジネス書に翻訳書のラインナップがあります。日本ではまだ書き手のいない新しいネタや、これから来るトレンドを察知して、版権を取得するわけです。その情報収集はどうしているのか? 各人のアンテナに引っかかるものや、海外版元から送られてくる「これから出る本」のリストを眺めたり、さらに毎年開催されている版権売買の見本市に参加することもあります。

 なかでも、ロンドン、アメリカブックエキスポ、フランクフルトに加え、絵本の見本市ボローニャの四大ブックフェアが有名です。しかし本の編集をしながらフェアに参加するとなると、本当にスケジューリングが大変。とくにフランクフルトは1週間という長丁場。1週間まるまるつぶれるなんてあり得なーい! と悲鳴を上げつつも、実はこうしたフェアに参加したからこそ得られる貴重な情報もあるのです。

 ブックフェアではだいたい30分~1時間ごとにいろんな版元の版権担当者に会って、新しい本の紹介を受けます。「こんな本を書くことが決まったよ。刊行は4年後だけどね(てへっ)」と言われることも。4年後!? 売れっ子や有名な著者ともなると、そんなことは当たり前。

 また、目玉のタイトル説明には、ことさら熱を帯びます。どれだけ高く売るかが彼らのミッションですから。なるほどうまいなー、と感心するアピールも多々。たいしたことない本でもだんだん「おもしろそう」に思えてくるから、あら不思議。やはりプレゼン力は大事だなぁと実感します。

 こうして版権を取得しても、たとえ原書の評価が高くても、翻訳書はそのまま日本語にしたからといって売れるわけではありません。このさじ加減がむずかしいところ。なかには、ロゴを入れろ、原書と同じ判型(本の大きさ)にしろ、内容のカットは一切ダメ、写真のクオリティを保つために印刷はこちらにまかせろ……などと注文がつくことも。

 先日担当した本はカバーの事前チェックを義務づけられていて、時間がないので致し方なく著者に直接承認に送ったところ、「すごくいい! 気にいったよ!」と即レスがきてギリギリセーフの綱渡り。それがコトラーさんだった日には、気持ちよく入稿できるというものです。実際に仕上がった日本語版を送ってあげて感謝のことばが届くと、これまた感慨深いもの。

とやま