オンラインメディアと電子書籍とのコンビネーション|翔泳社の本
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オンラインメディアと電子書籍とのコンビネーション 2013.05.09

 長らくくすぶっていた国内の電子書籍市場ですが、Amazonや楽天の参入、Nexus 7、iPad miniといった手頃な汎用タブレットの普及もあり、昨年後半からにわかに活気づいてきました。オンラインメディアを担当している我々の部署でも、今期本格的に電子書籍に取り組んでみようという話が出てきています。

 とはいうものの、いまだ市場規模が小さく、Amazonの「Kindle Direct Publishing」(KDP)といった気軽に自費出版できる環境も整えられつつあります。出版社としても当然何かしらの工夫が必要ですよね。

 私はソフトウェア開発者向けの「CodeZine」(コードジン)という専門媒体を担当しているのですが、少し前に著名なプログラマの方が数名、前述のKDPで上梓したとネットで話題になっていました。

 その感想を、とあるポッドキャストで聴く機会があったのですが、「執筆以外の作業が雑多」「客観的なレビューや校正がやはり欲しい」「孤独な作業はモチベーションが続きにくい(催促してほしい)」という形で、思いのほか編集者の関わりを求める意見を聞き、参考になりました。

 なかでも、「よい編集者は褒め上手」といった声は面白かったです。ちょうど近年流行りのソーシャルネットワーキングにも通ずるものがありますね。その辺りを意識した制作環境の整備が必要そうです。

 あと、ちょっと課題だなぁと考えているのが、書き手の視点からみると、執筆のコストって実際に文字をタイプするより、事前調査や推敲(多くの場合、文字を削る)にかける部分が大きいはずです。なので、仮に成果物の文字数やページ数が半分だからといって、値段(対価)が半分でよいとは限らない。この辺り、読者の方の認識と乖離しやすそうです。

 物理的な厚みの存在しない電子書籍では、小ボリュームで低価格帯の商品が出始めていますが、短時間で読み捨てる大衆娯楽ものならともかく、対象読者が狭く熟読するタイプの技術書では、その辺のバランスが難しいなと感じます。個人的には、低品質なものを乱造するくらいなら、自費出版させるか、執筆や販売をサポートするサービスを作りこんだ方がよいのではないかと。

 そこで一案として、次のような形でコンテンツを有効活用し、書き手になるべく還元することで、良質なコンテンツを一つでも多く生み出せる環境を構築できればと考えています。

 オンラインメディアの連載(原稿料)
  ↓ ニーズがあるものは、フィードバックを踏まえ加筆・修正
 電子書籍(印税)
  ↓ さらにニーズのあるものは…
 紙書籍やセミナー教材(印税・講師料)

 戦争でいえば「兵站」を整えるイメージに近いでしょうか。ビジネス的には販促などの工夫がより重要だと思いますが、長くなりましたのでこの辺で。

 Webの世界はタダで莫大な情報があふれかえっており大変便利ですが、ふと浪費した時間に気付くことはありませんか? 濃縮されたコンテンツで仕事や勉強にかけるコストを減らし、自由に使える時間をなるべく増やす。そんなお手伝いができればと考えています。

さいき