ケアマネジャーインタビュー:福祉教科書シリーズ(EXAMPRESS)|翔泳社の本
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ケアマネジャーインタビュー

後藤佳苗さん

保健師として保健所等に勤務しながら介護支援専門員の資格を取得。千葉県庁介護保険室で介護支援専門員の養成、保険者・事業者の指導を経て、2005年、あたご研究所を設立。ケアマネジメントの研修、保健福祉職種の国家試験対策の講習などを行っている。
福祉教科書シリーズ:ケアマネジャー書籍の執筆編者。

資格をとろうと思ったきっかけは何ですか?

─介護保険はこれから来るぞって思って。

「保健師として保健所に勤務していたころ、ケアマネジャーという新しい資格が創設されるということを知り、興味を持ちました。高齢社会の日本において、介護保険は将来的に重要性が高くなると思いましたし、ケアマネの仕事は保健師という地域コーディネートの仕事に近いとも感じたので、自分の仕事に活かせる資格だと思ったのです。」

資格を取ろうと決めてから、どんな勉強をしましたか?

─独学で短期集中で。

「その頃は使いやすい参考書があまりありませんでしたので、過去問をもとに自分で学習材料を作りました。そして独学で短期間に集中して勉強しました。基本テキスト(長寿社会開発センター 発行)はあったのですが、量が多く、すべて読みこなすことは無理と思いましたので、まずインターネットから過去問題と正答、介護保険法を入手しました。過去問題の答えはあっても解説がなかったので、条文などを見ながら、問題の誤りの部分を正しい文章に修正したものを作成しました。たとえば、主語と述語の組み合わせが誤っている場合、主語に合わせた正しい文章と述語に合わせた正しい文章を作成しました。そうして作成した正しい文章を繰り返し暗記するという方法をとりました。」

準備期間は?

─正味1ヶ月!

「7月に受験の申し込みをして、9月末から準備を始め、10月に入ってからは目から血が出るかと思うほど集中して勉強しました。直前の1週間は、朝は4時に起きて7時まで勉強し、片道20分ほどの通勤電車の中で自分の作成した正しい文章を繰り返し読み、帰宅して夜9時から12時までは電車で読むための正しい文章を作りました。だから、短期間でしたが1日7時間くらい充てて詰め込みました。夫が頑張ってくれたと思います(笑)。受験勉強をしている間、ご飯は作ってくれて、お風呂は沸かしてくれて、でしたから。」 「もしあの頃、過去問題の解説でいいものがあれば、正しい文章を作成する時間を節約できましたよね。ただ、書かれた文言では覚えにくいものがどうしてもあるから、自分の言葉だったらどう説明するかということは、したほうがいいと思います。参考書に書き込んでいけばいいんじゃないかな。」

資格取得後、どのように仕事が変わりましたか?

「資格を取ってまもなく千葉県庁の介護保険室へ異動になりました。希望を出していましたが、資格を持っていることも考慮されたと思います。」

仕事をしてどんなときにやりがいを感じますか?

「それまでは主に児童福祉に関わっていました。児童虐待の場合、介入の効果を評価するには長い期間が必要でしかも難しい。つまり、虐待を受けた児童が成人して自分の子供や孫にどのように接するのかまでを見届けなくては評価できないからです。たいていの場合、自分では確認・評価できません。そういうことに苛立ちや不全感を感じていました。 ところが高齢者介護の場合、本人および家族に対する効果が比較的早期に見えやすく、状態が好転するのを確認・実感できるのです。それに、高齢者は豊かな人生経験があるわけですから、援助者として高齢者自身の力を信じられるのです。信じて、寄り添って、引き出せばいい。これは面白いとやりがいを強く感じました。」

あたご研究所を設立しようと思ったきっかけは?

「行政の仕事を始めたころは、どこに行ってもやっていけるジェネラリストになりたいと思っていたのですが、辞令1本で転属させられ、次は児童、次は高齢者、また児童に戻って、となると根無し草になってしまうと感じました。それに、介護の仕事の面白さを知り、もう少し続けていきたいと思い始めたので、退職しました。居宅介護支援事業所を始めることも考えましたが、現場ではなく、ケアマネの後方支援をする、応援団的な立場でいたいと思い、あたご研究所を設立してケアマネ養成のための研修などを始めました。」

これからどのように仕事をしていきたいですか?

「保健医療福祉分野の職種間で連携をとることが増えていますが、保健医療分野と介護分野の文化のギャップを感じる場面が多々あります。保健師の経験を活かしてその橋渡しをしていきたいと思っています。」

これから求められるケアマネ像は?

「いまの高齢者は隣人と同じケアを受けることを望みます。この場合、援助者は求められている援助を想像しやすく、要援助者と援助者との意思のズレは生じにくいのですが、今後高齢者となっていく世代は、隣人とは異なるオーダーメイドケアを求める傾向があります。オーダーメイドケアは素晴らしいことなのですが、具体的なイメージがない要援助者がオーダーメイドを求めてくることや、求められる援助の形態等を想像しにくく、要援助者と援助者との意思のズレが生じやすくなります。限られた財源や予算を有効に使い、求められる多様なケアに応えられる、高齢社会を明るく輝かせるような発想豊かなケアマネが求められるようになると思います。」