技術書の翻訳に必要なスキル|翔泳社の本
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技術書の翻訳に必要なスキル 2013.05.30

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 はじめまして、入社16年目の中堅編集者です。

 入社当時は、IT雑誌の全盛期。その流れにもれず、『Visual Basicマガジン』編集部に配属され、その後、『dotNETマガジン』『Windows Developerマガジン』と、バリバリの雑誌編集の道へ。

 しかしながら、時の流れとともに愛した雑誌たちは、廃刊……気づくとIT書籍編集者の末席に名を連ねる今日この頃。独習シリーズなど、学生・開発者向けの技術書(プログラミング書)をぜっさん制作中であります。

 さて、今回のお題は「技術書の翻訳」。海外では多くの技術書が刊行されており、その中から良書・名著をチョイスして翻訳し、皆さんに読んでいただくのも、われわれ編集の役目の一つです。

 もちろん技術書の翻訳は、その技術テーマに明るい翻訳者や技術者(開発者)の方にお願いしています。この翻訳者の選定が技術書翻訳のキモの一つです。なぜなら、一冊の技術書を翻訳するというのは、なみたいていのことではないから。技術の翻訳には、さまざまなスキルが必要なのです。

 まず「英語力」。原文の正しい意味やニュアンスを理解できるだけの英語の力が必要なのは言うまでもないですよね。たとえば、“a”と“the”の違い、“in”“on”の訳仕方など、英文法をしっかりわかっていないと正しく翻訳できません。

 続いて「日本語力」。原文の意味・ニュアンスを正しく理解できたとしても、それを正しい日本語で表現できるかはまったくの別物です。原文(原著者)の意図がきちんと読者に伝わる日本語に翻訳するには、適切な訳語を選択し、時には英文法にとらわれず“意訳”する必要があります。

 そして「専門知識」も必要です。適切な訳語の選択や“意訳”には、専門的な技術・用語の知識が必要不可欠です。たとえば、『プログラマのためのSQL 第4版』のようなSQL書の場合、Normalization(正規化)、query/queries(クエリ/問い合わせ)など、SQLの専門用語を適切に選択し、文脈によって使い分けて訳さなければなりません。

 また、同書のように、翻訳兼監修をお願いするケースでは、記載されている技術内容やプログラム(コード)の精査・動作確認といった監修作業も発生します。

 最後に、これらをやり通すうえ不可欠なのが「体力・気力」。技術書のページ数は500、600はザラ、なかには800を越える超大作もあります(同書がまさにコレ)。特に、翻訳が専門ではない技術者(開発者)の方の場合には、本来の仕事が終わったあと、プライベートな時間を利用して作業していただくわけですから、体力と気力がなければできません。

 また、訳了までには一定の時間がかかるため、定期的に作業時間を確保したり、モチベーションを維持したりといった自己管理能力もおのずと必要となります。

 このように、原書の内容を正しく読み解き、適切な用語・文脈に翻訳して読み手に伝わるようにしなければならない――技術書の翻訳は、非常に地道、かつ、たいへんな作業です。

 そこには、原書(原著者)へのリスペクトや一人でも多くの日本人技術者に読んで欲しいという翻訳者の思いもあります。ローマは一日にして成らず。翻訳者のたゆまぬ努力の成果として、一冊ができあがるのです。

かたおか

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