BtoBウェブマーケティングの要は営業課題に寄り添うこと|翔泳社の本

BtoBウェブマーケティングの要は営業課題に寄り添うこと

2017/01/27 07:00

 BtoBのウェブマーケティングは個々の部署で完結する取り組みではありません。特にマーケティングと営業は連動しなければなりませんが、役割分担しないと両者の境界がなくなってしまいます。営業課題を分析することが重要だという『BtoBウェブマーケティングの新しい教科書』の著者・渥美英紀さんにお話をうかがいました。

BtoBウェブマーケティングには全体的な視点が欠かせない

――『BtoBウェブマーケティングの新しい教科書 営業力を飛躍させる戦略と実践』は、渥美さんが講師を務めるMarkeZine Academyでの講座内容も盛り込まれています。今回、書籍としてまとめられたのはどういう意図があったのでしょうか。

渥美:BtoBのウェブマーケティングに関連する分野では、最新の手法やツールの活用などは数多くセミナーが開催され、ノウハウもどんどん提供されています。しかし、全体像を捉えることができ、俯瞰的な立ち位置から戦略や戦術を考えられる書籍や講座があまりないというのが問題意識の発端です。

 BtoBのウェブマーケティングを推進するには、集客、コンテンツ、システムなどの要素を繋ぎ合わせ、さらに営業とうまく連携を取る必要があります。それぞれの要素が深く絡み合っているため、全体的な視点が欠かせません。

 これまで社内研修などもお手伝いしてきましたが、大きな会社だとしてもノウハウの継承は簡単ではありません。これからウェブマーケティングを始めようという人にとっては、教えてくれる先輩やパートナーもなかなかいません。BtoBのウェブマーケティングを網羅的に学べる場がなかなかないのが現状です。

 そんな中、MarkeZine AcademyでBtoBのウェブマーケティングの基礎と実践に関連する有料講座を積み重ね、90%以上の満足度を維持してきました。講座で発信してきた情報や推進してきたプロジェクトの成果を書籍としてまとめたものが『BtoBウェブマーケティングの新しい教科書』になります。

――どういう方に読んでいただくといいのでしょうか。

渥美:まずはウェブマーケティングをやらなければならないという認識があるものの、何から手を付けてよいかわからないという人です。限られたリソースの中で何かを始めようとする場合でも、将来目指すべきウェブマーケティングの形を考えることはとても大切です。将来を見据えながら、一つひとつの作戦を考える必要があります。

 また、今BtoBのウェブマーケティングを実践しているものの、思ったような成果が出ていなかったり、疑問を感じながら推進したりしている人にも読んでいただきたいと思います。

 成果が思うように出ない、疑問を感じるということは、何か解決できていない問題を抱えている場合がほとんどです。もう一度、全体的な視点から活動を見直し、今まで認識できていなかった問題点がないか見直す機会になればと思います。

営業課題を総合的に評価して作戦を立てる

――BtoBウェブマーケティングに取り組むうえで、大事なポイントはどんなことですか?

渥美:三つポイントを上げると、一つ目は営業環境や営業課題をよく分析をすることです。一般的な営業環境の変化に加え、自社の営業課題を分析し、ウェブサイトありきではなく、どのような「営業課題」の解決を目指すのかという視点で考えるということです。

 二つ目は、ウェブマーケティングができることを知ることです。ウェブマーケティングも打ち出の小づちではありません。できること、できないことがあります。できることにも範囲があります。的確にできる範囲をデータから見極めることが大切です。

 三つ目は、単に施策のみを実行するのではなく、「営業課題」を「ウェブマーケティング」で解決することを目指すことです。計画段階や実行段階に入ると、どうしてもデザインやコピーなどに気を取られ、そのプロジェクトが本来目指すべきものを見失いがちです。

 ウェブサイトリニューアルはあくまで手法なので、リニューアルを通じてどんな目的を達成しようとするのかを常に見据えておくことが大切です。営業課題に対して、すべての施策を一貫したストーリーとし、ウェブマーケティングのあらゆる手法を組み合わせて、これらの解決を志向することが大切です。

――具体的にはどういった課題があるのでしょうか。

渥美:営業課題は大別すると「新規顧客」、「既存顧客」、受注はしていないがコンタクトはとることができる「既存接点顧客」の3分類に対して、九つのパターンに分類することができます。

図2-23 営業課題優先度判別シート

 九つの営業課題に合わせて、どのようなウェブマーケティングの活用方法があるのかという基本方針を確認し、戦略の骨格を練っていきます。

 BtoBでウェブマーケティングというと、どうしても新規顧客の開拓がメインテーマになってしまいがちですが、冷静に考える必要があります。

 たとえば、営業課題を営業現場に確認していくと、ウェブサイトからの新規商談にあまり期待しておらず、実は既存顧客や過去に実らなかった商談への継続的なアプローチができていないという課題のほうが重要度が高い場合があります。

 また、過去にウェブサイトからよい商談が来たという実感がなく、本当は新規獲得を狙いたいが期待していないというケースもあります。新規開拓が本当に課題になっているのかは慎重に確認する必要があります。

 一方、解決可能性に注目をすると、狙っている検索キーワードの需要が少ない場合、そもそも検索している人が少ないので、ウェブサイトからの集客に期待することがかなり難しくなります。

 そういったキーワードに過度な期待をして、新規開拓を狙えばプロジェクトの骨格が崩れてしまうことになります。もし、新規開拓が営業課題としての重要度が高かったとしても現実的な解決可能性が低いのであれば、優先度が高い施策ではないかもしれません。

 つまり、営業課題の重要度に加えて、解決可能性からも総合的に評価し、実行効果の高い作戦を練り上げることが大切だということです。

狙うマーケットや担う営業プロセスで役割を分担する

――では、本書の内容について簡単に教えていただけますか?

渥美:「Chapter1 【準備編】BtoBのウェブマーケティングとは?」では、準備編として、BtoBのウェブマーケティングで本質的に価値のある活動をするためのヒントを掴みます。当たり前と思われやすいことに疑問を持つために、三つのケースをご紹介しています。

Chapter2 【戦略編】自社のあるべきモデルを考える」では、戦略を検討するために、営業課題を捉え、営業課題ごとの基本的なウェブマーケティングでの解決方針を学びます。基本となる戦略を理解したうえで、さらに高い目標を目指すためにはどのような戦略を取りえるのかをご紹介しています。

Chapter3 【戦術編】戦略を実現する作戦を練る」では、狙った戦略を実現するために、どのような施策を積み上げるかを考えます。実際にどのような集客方法を考え、コピーを練り、的確なコンテンツに誘導し、問い合わせフォームでたくさんの情報を得るか。一つひとつのステップでポイントをご紹介しています。

Chapter4 【推進編】成功確率の高い仕組みを作る」では、練り上げた作戦や施策を実現するために、なるべく成功確率が高くなる方法を検討します。BtoB分野では単独の部門のみで施策が完結することが少ないため、部門間の協力が足枷になってしまうこともあります。成功確率を上げるためのプロジェクトの枠組みやレポーティングの仕方、データ分析の仕方などを紹介しています。

Chapter5 まとめ」では、各Chapterで紹介したセルフチェックのシートやフレームワークをまとめ、どのような手順でプロジェクトを考えていくかをおさらいします。

――本書の中で特に押さえておきたい、また意識してもらいたい点はどこでしょうか。

渥美:BtoB分野でウェブマーケティングの検討を進めていくと、営業とマーケティングの役割分担を考えることになります。ウェブマーケティングを推進すればするほど、ウェブマーケティングができることが増え、営業との境界線をどのように設計するのかが重要になってきます。営業組織は逆に、本来業務に注力し、人だからこそできることに専念できる環境にできる可能性があります。

 具体的に営業組織とウェブマーケティングのかかわりを考えたときに、どのような役割分担をするかをモデル化したのが下記の五つの図です。

図2-28 ウェブサイトと営業組織の5つの役割分担モデル

 営業とウェブマーケティングを並列的にではなく、狙うマーケットや担う営業プロセスの役割分担として考えると、自社なりのモデルが見えてきやすくなるでしょう。

本書を通して「プロジェクトを動かす人」に

――最後に、本書を読んだ方にはこういうことができるようになってほしいという期待はありますか?

渥美:書籍として体系化するために、当てはまらないケースもあるかもしれませんが、BtoBのウェブマーケティングとして考えなければならない要素が網羅的に理解できます。

 これから計画を立てようとしている人にとっては、欠かせないポイントをきちんと踏まえることでプロジェクトの成功確率を上げることができるのではないかと思います。今まさに実践している人にとっては、自分が今やっている施策と一つひとつ突き合わせて本質を考えることで、各施策のレベルアップに繋がれば嬉しいです。

 残念ながら、実際の課題解決はプロジェクトを動かす人が必要であるため、さすがに書籍だけですべて解決できるようなものではありません。具体的な施策も個々のケースによるため、誰かが頭をひねり、実行しなければなりません。

 ですが、本書を手に取っていただいた皆様が少しでも改善ができそうだという確信を持つことができ、実行できそうだ!と気持ちもレベルアップして「プロジェクトを動かす人」になるお手伝いができれば、大変ありがたいと思います。

BtoBウェブマーケティングの新しい教科書

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BtoBウェブマーケティングの新しい教科書
営業力を飛躍させる戦略と実践

著者:渥美英紀
発売日:2017年1月20日(金)
価格:2,138円(税込)

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