だれもが暮らしやすい社会を実現するための「合理的配慮」とは?|翔泳社の本

だれもが暮らしやすい社会を実現するための「合理的配慮」とは?

2019/08/08 07:00

 2019年7月21日の参議院選挙において、重度の障害がある議員二氏が当選しました。これにより、参議院本会議場へのバリアフリー化が進められ、また議員活動中の介護サービスについても、当面は参議院が費用負担することになりました。そこで、「合理的配慮」という言葉もクローズアップされています。この記事では『これならわかる〈スッキリ図解〉障害者差別解消法』(翔泳社)から「合理的配慮」について抜粋して解説します。

合理的配慮ってどういうこと?

特別視することではありません

 合理的配慮とは「障害者を特別扱いしろ」というものではありません。配慮する側・される側どちらか一方の立場が強くなる関係ではなく、等しく平等の関係を築くことができるよう、無理のない範囲での調整を行うことが、合理的配慮と呼ばれるものです。

合理的配慮とは?

 障害者にとっての困難の中身は、障害それぞれで異なります。また、同じ障害であっても、程度や状況によって必要な援助は変わります。

 たとえば、視覚障害者であれば、みんな点字を使えるのでしょうか? 先天的な重度視覚障害であれば、教育の中で点字の読み方を獲得しているかもしれませんが、後天的な視覚障害者の場合、習得すること自体が困難な場合もあります。実際、ある調査では「点字ができる」と回答した視覚障害者は1割程度だったとされています。そのため、状況に応じて、拡大レンズ等の活用や音声による対応なども必要になってきます。

(障害別)合理的配慮の例

ときにはできないこともある

 障害の状況に合わせた配慮は、比較的容易にできることもあれば、難しい場合もあります。たとえば、建物の改修工事は比較的安価にできることもあれば、何百万円、何千万円とかかる場合もあります。金額が大きくなると、大企業ならできることでも、小さなお店などでは簡単にできるものではありません。

 合理的配慮といっても、配慮する側の負担が大きくなりすぎてしまっては意味がありません。あくまでも、できる限りのことをするのであって、無理にでもしなければならないわけではないのです。

過重な負担とは?

 どこまで配慮すればいいのかは難しい問題ですが、だれもが暮らしやすい社会は、小さな努力の積み重ねで手に入るかもしれません。やれることをする、ということを大切にしたいものです。

これならわかる〈スッキリ図解〉障害者差別解消法
これならわかる〈スッキリ図解〉障害者差別解消法

著者:二本柳覚
発売日:2016年9月15日(木)
価格:1,944円(税込)

本書について

本書は「障害者差別解消法」や「障害者雇用促進法」について成り立ちや法律の内容、具体例などをやさしく解説しています。福祉に携わる方や、福祉資格を取得しようとしている学生さん、そのほか行政や民間企業で対応を考える方や窓口になる方、また、広く一般の方にも読んでいただける内容となっています。