気軽に始められるAndroidアプリ開発の魅力とは? 「ほんきで学ぶ」入門書の著者・寺園氏に訊く|翔泳社の本

気軽に始められるAndroidアプリ開発の魅力とは? 「ほんきで学ぶ」入門書の著者・寺園氏に訊く

2015/07/21 08:00

 いま女子高生の80%、日本人の45%がiOSユーザーです。アプリ開発を始めようと考えている方にとって、AndroidとiOS、どちらにすればいいのかは迷いどころ。仕事だけでなく、趣味としてもアプリ開発を考えている方の疑問を解消するため、今回、翔泳社が7月13日(月)に刊行した『ほんきで学ぶAndroidアプリ開発入門』の著者・寺園聖文さんにお話をうかがいました。

ほんきで学ぶAndroidアプリ開発入門

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ほんきで学ぶAndroidアプリ開発入門
Android Studio、Android SDK 5対応

著者:寺園聖文
出版社:翔泳社
発売日:2015年7月13日
価格:2,800円(税別)

  • CHAPTER01 Androidアプリ開発をはじめる前に
  • CHAPTER02 Androidアプリ開発の準備をしよう
  • CHAPTER03 Androidアプリ開発の基本を学ぼう
  • CHAPTER04 Androidアプリのウィジェットに慣れよう
  • CHAPTER05 Androidのシステムを学ぼう
  • CHAPTER06 Androidアプリを作ってみよう
  • CHAPTER07 Material Designを使ってみよう
  • CHAPTER08 データを使いこなそう
  • CHAPTER09 ゲームを作ってみよう
  • CHAPTER10 アプリを公開しよう

AndroidとiOS、どちらから始めればいいのか?

 原宿の女子高生100人のうち約80%がiPhoneユーザー、という調査が話題になったこと、覚えている方いらっしゃるかもしれません(原宿の女子高生100人に聞いてわかったスマホとアプリ3つの真実)。また、Kantar Worldpanelによれば、日本ではiOSユーザーは45%に上り、これは世界平均の約2倍(Androidは51%)。こうした状況で、日本でアプリ開発を考えている方、特に個人は、いったいどちらのOSをベースに開発をすればいいのでしょうか。

 翔泳社では7月13日(月)に、『ほんきで学ぶAndroidアプリ開発入門 Android Studio、Android SDK 5対応』を刊行しました。本書は開発ツールのインストールから、作ったアプリを公開する方法までを押さえた入門書です。しかし、アプリ開発を始めたい方でも、Androidで本当にいいのか、不安に思う方もいるかもしれません。

 そこで今回、著者の寺園聖文さんに、アプリ開発をしようと考えている方にとって本書がどのように役に立つのかをお話しいただきました(本記事では特記しない限り、アプリはモバイルアプリを指します)。

アプリを作るのは楽しい!

――本日はよろしくお願いします。寺園さんは紆余曲折があったあと、株式会社Re:Kayo-Systemを設立され、主にAndroidとiOSのアプリ開発をされていらっしゃいます。そもそもアプリ開発を仕事にしたのは、どういう理由だったのでしょうか。

寺園:僕はもともと東京でUnixというOSの上で動作するシステムの開発をしていました。ですが、自分の作ったものを最終的に受け取った人がどんなふうに幸せになるのか見えていなかったこともあって、あまり好きな仕事ではありませんでした。

 そのあと仕事を辞めて印刷会社に転職したんですが、それまでとの仕事とギャップが大きく、結局は友達に誘われて開発系の仕事を再開しました。ちょうどJavaが出てきた時期で、Javaをもっと知りたかったので、その会社に勤めながらほかの仕事もしていたんです。が、Javaの開発系の仕事が増えてきたので、退職して個人事業主になりました。

著者:寺園聖文さん

 しかし、自分の強みを活かしたいと思いつつ、将来のビジョンは見えていませんでした。そんなとき、Javaで開発できるAndroidが台頭してきたんです。さっそくAndroidアプリの開発を始めました。勉強会もやり始め、そうしたことが本書や前著の執筆に繋がったのだと思います。いまの仕事は楽しいですね。

Javaも勉強しながらAndroidアプリ開発を勉強する

――そんな寺園さんが入門書を書かれたわけですが、どういう方に向けた本なのでしょうか。

寺園:僕は長らくプログラミングをやってきましたが、自分が特別だとは思っていません。この仕事は好きですが、方法さえ理解すれば誰でもできる仕事だと思っています。

 ですので、アプリ開発を全然したことのない方、あるいは僕のように基幹業務、システム開発をしている方――特にルーチン作業化してしまっているような方に読んでみてもらいたいです。自分でアプリを作って公開する楽しみを伝えたいんですよね。

 下地としては、ある程度Javaの知識が必要です。ですが、挑戦という意味ではJavaの勉強をしながら、本書を読み進めるのがいいのではないでしょうか。知識があるとないとでは理解度が異なりますね。

――翔泳社でも『スラスラわかるJava』を刊行しています。こうした解説書と一緒に読み進めるといいんですね。

寺園:勉強会ではデザイナーの方や、ExcelとWordしか使わない方、コントロールパネルの開き方を知らない方もいらっしゃいますが、継続して勉強すれば誰でもできるようになるんです。

Androidでアプリ開発をする魅力とは?

――そもそもの話になりますが、日本でのAndroidとiOSのユーザー比率はほぼ半々、最近原宿の女子高生の80%がiPhoneを使用しているという調査もありました。こうした状況の日本で、Androidでのアプリ開発を始める魅力はどこにあるのでしょうか。

寺園:そうなんですよね。知り合いにアプリ開発をしていると言って、Androidだと話すとがっかりされることもあります(笑)。日本人は周りが使っているのと同じものを使いたいという気持ちが強いのかなと思います。僕自身は両方使っていますが、ほとんどの人は特にこだわりはないんじゃないでしょうか。

 それでも僕がまずはAndroidでアプリを開発することをおすすめするのは、なによりとても敷居が低いことが挙げられます。開発するために必要なソフトウェアやPCも自由ですし、Google Play Storeに初回登録料(25米ドル)を払いさえすれば公開もできるようになります。初心者向けの勉強会でもAndroidが中心です。

 iOSのアプリ開発はMacでやる必要があるので、誰もが気軽に、というわけにもいかないでしょう。本を買っただけではできないですし、iOSデベロッパプログラムの登録も年間参加費が11,800円かかります(2015年6月現在)。最近はiPhoneの種類も増えてきたため、iOSアプリの開発もどんどん高度化、複雑化している気がします。

 たしかに日本ではユーザーが多いですが、世界を見て開発してもいいですね。世界のシェアはAndroidが約80%と圧倒的です。それに、アプリの数も非常に多いので、単に公開するだけではダウンロード数は伸びません。たとえ国内向けのアプリだったとしても、少しでも国際化対応しておいたほうがランキングのうえでは優位に立てます。

 Android Studioになってからというわけでもないと思いますが、国際化対応は年々しやすくなっています。かつてテキストを編集するときには自分で別ファイルを作っていましたが、Android Studioには最初からツールがついています。日本語から英語にするのも比較的簡単になりました。

「自分で作ったアプリ」を公開するところまで

――初めてアプリを作ろうと考えている方には、Androidがおすすめという理由が分かりました。では実際、本書を読むと何ができるようになるのでしょうか。

寺園:本書ではAndroid Studioで開発することを前提に話を進めています。昔はEclipseが主流でしたが、いまから始める方はAndroid Studioでないと難しいでしょう。移行しようとしている方にも参考になる部分はたくさんあると思います。そのためにも、曖昧な言葉で濁さず、はっきりした言葉で説明し、お金を出して買ってよかったと思ってもらえる本にしました。

著者:寺園聖文さん

 本書は「ほんきで学ぶ」とあるように、ゼロの状態からアプリを作り、公開するところまできちんと書いています。もっと書きたかったことや詳しく説明したかったこともあったんですが、本書はひととおりアプリ開発の流れを把握することが最も重要な事柄です。

 なので、ボタンやレイアウトといったありきたりなことについては最低限必要なことだけに絞り、それらをどうやって画面に組み込むかということよりもむしろ、デバイス上で実行したらどういう動きをするのか、どういう見た目になるのかを分かってもらうようにしました。まずは動くプログラムを触ってみてもらいたいんです。

 もちろん、本書を読み終わったあともまだまだ勉強すべきことはあります。ですが、自分が作りたいアプリに近いものが本書の中にあると思うんです。それをどんどんカスタマイズしてもらい、最終的に「自分で作ったアプリ」を公開するところまでやってほしいですね。

まずは実習で手を動かして、それから講義で理解する

――本書はまず手を動かす実習をし、そのあと講義で理解するという流れになっていますが、これは逆の構成よりも覚えやすいのではと思います。翔泳社が刊行している「10日でおぼえる」シリーズを踏襲し、いいところを引き継いだ形です。これについてはどう思われますか?

寺園:手を動かしてからその理屈を説明するのは、学ぶ側としては理解が捗りますし、教える側としてもやりやすいですね。なぜなら、各章の主要テーマだけでは一つのアプリを作るのは難しく、ほかの要素も必要になるからです。テーマを説明してから実習に移るとなると、テーマ以外にもさまざまなことを説明しないといけません。

 ですが、本書の形式だとそういったことを考えずまずは手を動かし、そこで重要となるテーマだけについて説明することができますね。それに作るのは楽しいですし。でも難しいのは、手を動かした結果、動かすのが楽しみなアプリができないといけないことです。なので、サンプルはアプリとしてちゃんと動くように作っています。

 もしサンプルが動かないとか、分からないことがあったら以下のサイトで質問を受けつけていますので、いつでもお気軽にご利用ください。Android Studioはバージョンアップも1週間に1回くらいの頻度でありますからね。

読者質問コーナーはこちら

こだわりは「実際の開発」ができるようになること

――本書で寺園さんがこだわったのはどういうところなのでしょうか。

寺園:いくつかありますが、特にこだわっているのはサンプルアプリです。冒頭でダウンロードして進めてもらうように書いていますし、実際にアプリを作っていくときもよく使うアプリを入れています。

 また、基本的なところだけ学ぶのであればサポートライブラリ(下位互換のライブラリ)は必要ないんですけれども、実際の開発はこれなしでは考えられません。本書では、本当にアプリを作れるようになってもらいたいので、サポートライブラリもなるべく使うようにしています。

 それと、Javaの開発者を対象にしたビルドツールであるGradleについて。Android Studioが出た当時は、Gradleの知識が必須な点があったため、敷居が高いというイメージがありました。その知識があったほうが有利ではありますが、Android Studioの機能も優れてきているので、実際には絶対に必要というわけではありません。とはいえ、本書では外すわけにはいかないので、ファイル修正の説明の際に最低限のことは書いてあります。

泣く泣く諦めたGoogleアナリティクス

――制作時、ページ数の都合で削った部分として、Googleアナリティクス(GA)の組み込み方についてがあるそうですが、アプリにGAを組み込むメリットは何なのでしょうか。

寺園Googleアナリティクスはウェブサイトだけでなく、アプリにも組み込んで使うととても便利です。ユーザーの情報が得られるだけでなく、アプリの中でどのページがどれくらい見られているか、どの機能がどれくらい使われているか、その機能によってどういった行動が発生しているのかが分かるんです。

 ウェブ解析と同じで、SEO対策やアプリの洗練化、アップデートの参考にもなりますし、広告を出すタイミングとか、アプリ内であまり使われていない機能を削除するとか、そうした判断にも利用できます。個人で使いたがっている方は多いんですが、GAのテクニックを説明している解説書はなかなかありません。実際には、GAは無料ですし、自分でやればすぐできるんですが……それは次回作で解説します(笑)。

 実はほかにも、オープンソースのライブラリについてももっと入れたかったんです。いま、Androidアプリの開発はそれを組み合わせてどれだけ早くいいものを作れるかという世界になっています。ライブラリはものすごくたくさんあって、いいものも多いので、最初はサンプルも作っていたんですよ。グラフィック処理やカメラ、インターネットなど……今回はデータベースとインターネットだけなんとか入れられました。

ゲームの開発が一番面白いかも?

――ここまでお話しいただきましたが、最後にこれだけは伝えておきたいということはありますか?

寺園:「CHAPTER 09 ゲームを作ってみよう」は本書の総仕上げでもあり、面白いと思います。というのは、libGDXという、Javaでゲームを開発するオープンソースのライブラリを使用しています。日本ではあまり知られておらず、よくUnityやCocos2d-xが使われますが、海外では一般的に使われています。GoogleのIngressもlibGDXで作られているんですよ。

 libGDXはJavaを使うにもかかわらず、AndroidとiOSに両対応しているんです。普通、マルチプラットフォームのライブラリは特別な言語が用いられますが、libGDXはAndroidアプリ開発をしている方には全然マイナスがないんですよ。Androidの敷居の低さがここにもあるというわけです。これは皆さんにもっと知ってもらいたいですね。この「CHAPTER 09」だけでも価値があると思うので、気になる方はぜひ本書を読んでみてください。

――寺園さん、ありがとうございました。

 Re:Kayo-Systemは神戸に拠点を構えているため、今回は東京にお越しになるタイミングで時間を作っていただき、インタビューをさせていただきました。担当編集の宮腰からは寺園さんのこだわりが強く出た本ということを聞いていましたが、まだまだ書き足りないことがあったようです。

 『ほんきで学ぶAndroid開発入門』は、お答えいただいたようにプログラミングの知識がゼロでも、「ほんきで学ぶ」気概があれば誰でも、Java解説書と並行して学んでいくことができます。また、ゼロよりは知識がある方には『作ればわかる!Androidプログラミング 第3版 SDK5/Android Studio対応』もおすすめです。

 アプリ開発に興味を持っている方、この機会に始めてみましょう!

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ほんきで学ぶAndroidアプリ開発入門
Android Studio、Android SDK 5対応

著者:寺園聖文
出版社:翔泳社
発売日:2015年7月13日
価格:2,800円(税別)

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  • CHAPTER02 Androidアプリ開発の準備をしよう
  • CHAPTER03 Androidアプリ開発の基本を学ぼう
  • CHAPTER04 Androidアプリのウィジェットに慣れよう
  • CHAPTER05 Androidのシステムを学ぼう
  • CHAPTER06 Androidアプリを作ってみよう
  • CHAPTER07 Material Designを使ってみよう
  • CHAPTER08 データを使いこなそう
  • CHAPTER09 ゲームを作ってみよう
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