会社創立40周年という節目を迎えるにあたり、これまで刊行してまいりました書籍の歩みを、ブックデザインという観点から振り返ります。本展示では、社員による投票で選ばれた40点の書籍を取り上げ、それぞれに込められた編集者の想いと、ブックデザイナーの工夫やこだわりをご紹介します。時代とともに変化してきたブックデザインの魅力をお楽しみください。

1994

入社早々だったので、ディレクションには加わっておらず、突然「これが表紙だ」と見せられた記憶があります。「デジタルカルチャー誌」のはずなのに、なぜハニワ? 「天孫降臨」? はてなマークがたくさん頭のなかに。ただ、編集長も当時の社長も「いいよー!」「すごくいい!」「これで世界を変えるぜ」とえらく高揚していたので、「ぶっ飛びすぎでもいいのか、そうか。やっぱり楽しそうな雑誌だ」とワクワクでした!(5号で休刊)

1995

横尾忠則氏は1994年、個展開催のためにニューオリンズを訪れた。この体験をもとに、当時は稀少だったサイテックス社製のデジタル画像処理ワークステーションを駆使し、展示作品のみならず、日記、メディアからのメッセージ、記録写真などを一冊の本「三日月旅行」にコラージュ。1980年に画家宣言をした横尾忠則氏が、テキストから編集構成、本文レイアウトのすべてを手がけたアートとしてのエディトリアルデザインである。

1998

1998

2000

2001

2001

2002

2002

2004

2006

2006

2008

「お店の包装紙のようなイメージに」というようなリクエストだったと記憶しているのですが、Photoshop等の書籍コーナーではあまり見ない、本当におしゃれでお店においてありそうな素敵なカバーで印象に残っています。

本書は2007年にはじまった「逆引きデザイン事典シリーズ」の一冊です。オビにある、シリーズのキャッチにあるように“ボロボロになるまで引かれたい”という思いを込め、長く使われ続ける普遍的なデザインを追求した装丁になっています。(宮嶋章文さん)

2010

2014

2014

2016

当初「デザインはじめてBOOK」という書名で企画が動いていたのですが、『言ってはいけない 残酷すぎる真実』という新書にあやかった書名はどうかと、デザイナー平本さんにメールしたところ、翌朝このデザインを送ってくださって、そのスピード感にびっくり。インパクトの強さにもびっくり。誌面の内容にもよく合っていて猛烈にテンションが上がったことを覚えています。

創立40周年、誠におめでとうございます。この本は地元で開いたチラシづくり講座をもとに、専門用語を使わない分かりやすさを大切にして生まれました。カバーはおしゃれさに寄せるか迷いましたが、初心に返り、説明のいらない直球デザインを選びました。発売から9年経った今も多くの方に手に取っていただき、今回選出いただけたことを大変光栄に思います。これからの40年も、ますますのご発展をお祈りしております。(平本久美子さん)

2016

この装丁については、デザイナー坂本さんの腕前はもちろんですが、写真が良いということに尽きるわけです。こちらはInstagram(@_kyalotta)でお写真を公開されているカラキカナエさんのおうちの、白猫ぺキオ君と小春ちゃんです。この本はもう10年前のもので、小春ちゃんは14歳になり、ぺキオ君も元気に暮らしています。撮る人と撮られる人&猫の関係性が写った、すてきな写真だと思います。

猫好きな私にとってご褒美みたいなお仕事でした。飼い主さんが撮られたかわいらしい猫と家族の写真満載で、カメラ撮影は「テクニックではなく愛」と知りました。(クオルデザイン 坂本真一郎さん)

2017

『逆引きデザイン事典』のデザインは、シリーズの立ち上げ時にデザインコンセプトをしっかり決めたのですが、何度も改訂を重ねるたびにコンセプトよりもインパクトを求めて、デザインをずらし続けていきました。このへんまでくるとかなり逸脱していますね。あらためて気づかされます。

40周年おめでとうございます。今回、選出していただいたデザイン(8年前)を改めて見返しました。当時を思い起こすと、他の出版社さんでは採用されないような尖ったデザインを翔泳社さんの編集の方が好んでくれていたように思います。年齢とともに型にはまったデザインになりがちな今の自分に喝をいただきました。ありがとうございました。(クオルデザイン 坂本真一郎さん)

2017

発達障害の人たちが自分事としてイメージできるイラストと、それを最大限活かす温かみのあるカバーデザインで、後のシリーズ化につながる1冊目として多くの方に受け入れられることができました。

この発達障害シリーズの装丁は、発達障害の人とそのまわりにいる家族や友人が、安心感を持って、少しでも暮らしやすくなることを想像できるように、柔らかい色、柔らかい書体、わかりやすいイラストでデザインしています。少しでも必要な読者に届いていれば嬉しいです。(株式会社tobufune 小口翔平さん)

2017

書籍の企画段階から、類書の中でも一番やさしい入門書の装丁を考えていました。頭の中には、博士と生徒が森の中で楽しく学んでいる様子が思い浮かび、デザイナーの方にはそれを具体的に形にしていただきました。多くの年代の方に手に取ってもらえるような装丁になったと思います。

学びの入り口『Python1年生』、読者に「わかりやすそう」「楽しそう」「気軽に手にとってもらえる」、そんな佇まいの書籍を目指してデザインしました。書籍タイトルはソフトウエアのエフェクトは使用せず、実際に手書きした文字をベースにする事で、カッチリせず幾分かのユルい雰囲気を感じてもらえるよう心がけました。(大下賢一郎さん)

2018

リバイバルし始めていた80年代風のデザイン。「80年代ならステレオテニスさん!」ということで、ステレオテニスさんにディレクションしていただくことが第一でした。80年代モチーフを根本から理解しているからこそできる、シンプルながらど真ん中の装丁デザインにしていただきました。昭和レトロではなくて、しっかり80年代のデザイン。収録しているイラストや飾り罫の充実度や豊かな個性が伝わります。

制作した当時から思うと、2025年現在、日本の80年代の熱気が再び回帰し、こんなに市民権を得るとは想像していませんでした。80年代のモチーフは強烈なサブカルチャーだと思っていたので、ちょっと時代が早すぎたかもしれません! いいですね〜80年代って。ここに掲載されている作家のみなさんが現在さらに活躍されているのが嬉しいですね。フリー素材として使えるなんて贅沢で貴重な一冊です! 装丁展に選んでいただき嬉しく思います。

2021

北斎の浮世絵にはすでに西欧のモダンデザインの要素が詰まっているという、本書の骨子を表現しました。ラフ段階では、「神奈川沖浪裏」の案で進めていたのですが、サブで用意していた「凱風快晴」をもってきたところ、富士山がこちらを見ているような感じがして、これだと思いました。

「北」「斎」を大きく扱うことで「北斎」の本であることが一目でわかるようにしました。また「HOKUSAI DESIGN」の文字を配置して、和の北斎の中に洋のデザインの要素があるということを表現しました。帯には赤富士をイメージさせる赤を敷き、強い赤で目を引くようにしています。(スーヴェニアデザイン 武田厚志さん)

2021

原書は大型本で、日本語版では判型を小さくせざるを得なかったため、小さくてもインパクトのあるデザインにしようとデザイナーさんに相談しました。本書は実写映画のコスチュームを紹介する本。実物の衣装を撮影した写真だからこそ出る立体感や、布地や装飾の質感も伝わるようにしたかったので、少し動きのある写真に。「ドレスの写真がきれい」「キラキラしていてディズニー・プリンセスらしい」という感想をいただきました。

原書は幾つかの衣装をサムネイルで並べるデザインでしたが、日本語版については判型もひと回り小さくなるので写真は1点に絞り、より明快でキャッチーなものにしようと考えました。写真は象徴的なプリンセスキャラクターであるシンデレラのドレスを選びました。白地に透き通るようなブルーがとても美しく、さらにそこへ金の箔押しでタイトルを入れることで、より煌びやかな印象のデザインになりました。(APRIL FOOL Inc. 中山正成さん)

2021

原書の装画が非常に印象的で、完成イメージができる状態から始まりました。しかしそこはさすが斉藤さんで、原書に負けないインパクトが出たと思っています。原著者のノーレン・ガーツさんも気に入って、ポスターにして自宅に飾ってくれたのが嬉しかったです。個人的には、帯を外した状態も気に入っています。下部に入っている欧文は、日本版独自のものです。

インパクトある装画が印象的な装丁。これは原書と同じ絵を使用しております。デザインとしては、ほぼこれで「決まった感」が出たので、あとは書名等を上部に小さく配したのみです。一方で帯デザインは密度を上げ、相対的に書名周辺のスッキリさが活きるように。また、装画は元々キャンバスに描かれた絵なので、紙資材はパターンズFクロスを使用しテクスチャーを似せています。グロス感も手伝い、理想的な仕上がりになりました。(斉藤よしのぶさん)

2022

アイデア段階では、だまし絵のペンローズの三角形をアイキャッチに置く案をメインで進めていて、その代案のようなかたちでテープ案があったのですが、トラテープのような斜線を入れてもらったとたん、こっちだと思いました。

連続して配置され、見切れたタイトルが視線誘導に乱れをつくり、テーマである“ダークパターン”の不穏さを直感的に訴えます。さらに、表紙右側に配した警告を想起させるストライプが、緊張感を高める装丁になっています。(宮嶋章文さん)

2022

本書のテーマがプロトタイピングだったので、試行錯誤しているそのままを見せられないかという思いつき一つでいってしまったデザインです。ふりかえると「途中感」が出すぎている気もします。タイトルとサブタイトルが逆のノーマル案もあったのですが、こちらを選びました。

タイトルを無地のノート風の背景に入れ、校正の赤字を追加することで、試行錯誤の「失敗」プロセスを想起させます。あえて未完成感を出し、「つくりながら考える」というキーワードを効果的にアピールした装丁になっています。(宮嶋章文さん)

2022

本棚の写真ではなく、本が乱雑に置かれたイラストなのが、ひと味違う読書術を含んだ本書を表現していると思います。森さんからこの帯文が配置された案が届いたときには、思わず唸りました(帯ナシになったのは最高の想定外でした)。表紙や本文の色づかいも大胆で、全体を見ても「本を読む楽しさ」があふれる雰囲気にしていただきました。

「読書術」なので、本に埋もれるとか本の中に入り込むとか……みたいなイメージでラフを作り、この案になりました。PCが入っているのと1冊だけに色を付けているのは編集・秦さんからのご要望です。帯文がイラストの上に散っているのは、私が帯ナシ仕様と勘違いしたせいですが、結果的によい感じに仕上がったかなと思っています。40周年、おめでとうございます!

2022

ILLUSTRATIONシリーズのカバーイラストは毎号、作家の多様性を象徴する存在として「STRA」というキャラクターを担当作家さんの自由な解釈で描いていただいています。担当作家さん本来の持ち味を発揮いただけるよう、あまり細かなディレクションはせず、楽しんで描いていただくことを一番に考えています。『ILLUSTRATION 2023』ではアニメーター/イラストレーターのはなぶしさんに担当いただきましたが、「創作の楽しさ」が伝わってくるようなワクワクする世界観を表現いただけたように思います。

2023

本特集は、世の中や広告・マーケティング業界で「Z世代」への注目が高まり、そのイメージが独り歩きし始めた時期に出しました。しかし、当然ながら、彼らも一人ひとり考え方やニーズは異なります。そこでZ世代を一緒くたにせず、インサイトを深掘りしてリアルな姿を伝えたいと考え、表紙には色々なタイプの若者が描かれたイラストをチョイスしました。

2023

プログラマーの悲痛な叫びを切実に伝えるために、デザインには「吹き出し」を使いたいと思っていました。メインタイトルはイラストと併せてアイキャッチの役割に全振りし、その分、サブタイトルをドカンと大きく配置した印象に残るデザインにしていただきました。背景の蛍光色に黄緑を選んだのは、「初心者」「わかばマーク」のイメージです。

「新人プログラマーの絶望感」が巧みに表現されたイラストをもとに、初心者の方でも手に取りやすいデザインを目指しました。また、競合書との差別化を図るために蛍光色を採用し、色数を最小限に絞ることでコストを抑えています。親しみやすさと信頼感のバランスが取れた一冊に仕上がったように思います。(合同会社256 萩原弦一郎さん)

2023

職人(著者)の技巧の全てをこの1冊に込めた」という雰囲気を出したく、デザイナーさんには“和風の本格派”をイメージしたデザインをお願いしました。その分野の深い知識と技術を習得し、流行に流されずに本物を追求する姿勢を「極み」というワードとともにデザインからも感じ取ってもらえたら嬉しいです。

2024

1200ページの大著を長期で制作する中で私のイメージがふらつき、デザイナー斉藤さんに迷惑をかけた自覚があります。洋書、漫画、ゲーム、GIFアニメ、建物、街の看板、果ては傘のデザインまで参考にしたバラバラなアイデアを、うまくまとめていただきました。帯を外すとより重厚感があり、表紙、扉、献辞も印象的で、はがしたりめくったりするごとに「開封の儀」のようなワクワク感があると思っています。

上製本・A5判で60ミリ以上の束幅。その本の圧倒的な存在感に負けないデザインを心掛けました。表1・表4に配したビジュアルは西洋のお城+有刺鉄線。そのアイデアはH編集長からのご提案でした。漆黒のバックから浮き出るように書名、著者名を白抜き文字でコントラスト強く目に入るように。帯デザインも派手に。本書は「鈍器本」ということでSNSでも話題になった書籍でもあります。(斉藤よしのぶさん)

2024

「木」「耕す」「実る」といったキーワードを表現するのに、精緻な線画もかっこいいけれど、それだけだと骨太ノンフィクションのように見えてしまうので、マーカーのような太い線のイラストを重ねよう――。APRONの前田さんと植草さんのすばらしい発想に、いまだにニンマリします。

最初の打ち合わせで、著者の小田さんや編集の坂口さんとアイデアを出し合いながら過ごした時間がとても楽しく、その時の空気が本書のテーマと重なり、装丁にも自然と反映できたように思います。「場」から木が育ちアイデアの実がなるモチーフに、タイトルの「アイデア」と「デザイン」が呼応するレイアウトでまとめました。選出の知らせを聞き、あの日のことが蘇り、とても嬉しく感じました。創業40周年、おめでとうございます。(APRON design lab. 前田歩来さん、植草可純さん)

2024

着彩前の線画を絵の「すっぴん」として集めた画集で、タイトルのすっぴんの文字はデザイナーさんの手書きです。フォントにはない飾らない線の味が伝わっていたら嬉しいです。

「すっぴん」という言葉から、ここからどんな風にも化けられる、ナチュラルな力強さを感じました。既製のフォントではなくありのままの手書き文字にすることで、タイトルの魅力を伝えています。また、装画の透明感を魅せるために、余白のバランスを意識しました。(陰山真実さん)

2024

イラストをカバーの表面に入れるかどうかはいつも悩みどころです。本書はデザイナー坂本さんの提案でイラストを入れてみたところ、著者さんのオリジナルキャラクターが、まるで失敗そのものを象徴するアイコンのように映し出されて驚きました。

頭の中で必死にカバーのデザインのアイディアを考えても何日も何も浮かばないことがあります。そんなある時、なんとなくずいぶん昔の「ゴーストバスターズ」という映画を見ました。見ているときにこの映画のポスターを思い出し「あっ!」と思いました。そのポスターのデザインが担当させていただいた「失敗本」の元ネタです^^。(クオルデザイン 坂本真一郎さん)

2024

制作を進めるなかで「『他人からの視線を怖いと感じている』ということを自覚するのは、結構難しいのかもしれない」と思いました。そこから、「カバーを見たときに『日常生活で私が悩んでいることって、[他人からの視線]への恐怖心からきているのかも』と、ふと思ってもらえるといいな」と考え、企画概要などをデザイナーさんに伝えたところ提案してくださったのがこのデザインでした。イラストレーターさんのお力もあり狙いどおりになったと思います。

編集の橋本さんから本書に寄せる思いを伺い、丁寧に関わりたいと感じました。視線への恐怖という繊細なテーマに向き合ううえで、リアルな描写は読者の負担になると判断し、最小限の線で安心感と強度を持つ若田紗希さんのイラストを軸に構成しています。大きな“目”とそれに向き合う人物が、テーマを過度に刺激せず示してくれています。中面のイラストにも温かさが息づいており、本書は若田さんの力に支えられた一冊だと感じます。(APRON design lab. 前田歩来さん、植草可純さん)

2024

本書はTwitterができてから、イーロン・マスクに買収されてXになる過程を扱っているので、X・Twitter双方を想起させる色やモチーフを入れたいと考えていました。そこでXのテーマカラーの黒をベースに、Twitterのアイコンだった青い鳥の羽を散りばめながら、本書にある不穏な様子を表現し、翻訳書のかっこいい装丁を目指しました。

2025

美しい造本・装丁で名高い文京図案室さんによる1冊です。すべての値段が上がり続ける2025年に丸背の上製本を実現するのはなかなか苦労いたしましたが、あっちを削り、こっちを工夫し、並製でいいだろうという上司の無言の圧力に負けず(笑)、ドイツ人画家クレメンス・メッツラーさんの挿画の力でかわいらしい本になりました。本文は特色2色刷、表紙はシルバーインク刷となっております。ぜひお手に取ってみてください。

2025

ロングセラー画集「ILLUSTRATION MAKING & VISUAL BOOK マツオヒロミ」の新装版として刊行した本書籍のデザインテーマは「旧版のリブート」です。旧版刊行時からこれまでの約10年間でマツオヒロミさんはたくさんの経験を積み重ねられ、作家さんご自身の好みの女性像や表現方法にも変化がありました。“今のマツオヒロミ”を反映したイラストに刷新しています。また、旧版でメインだった赤を、新版では差し色にするなどの工夫を施し、旧版をお持ちの方も見比べて楽しめるよう意識しました。